日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

「不機嫌な赤いバラ」を観る  シャーリー・マクレーンから目が離せない

 

 原題は「Guarding Tess」。「テスのお守り」というところか。見終わって久々に満足した。小品だが、なんとも洒落たコメディ。画面が進むに連れて、初めは身勝手で傲慢な婆さんにしか見えなかったシャーリー・マクレーンが、なんともチャーミングな愛すべき存在に変わってくる。ニコラス・ケイジのちょっと間の抜けたように見える馬面(失礼!面長な顔というべきか)も、次第に引き締まって、頼もしいものに見えててくる。

 

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『はじまりのうた Begin Again』を観る 何かとりとめなくて

 

 かつては辣腕だったが、今は落ち目のプロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)が、無名のシンガーソングライター、グレタ(キーラ・ナイトレイ)と出会って、夢よもう一度、というストーリー。うーん、よくある話だが、何かサラサラしていてとりとめがない。

 

はじまりのうた BEGIN AGAIN(字幕版)
 

 

 ダンは自ら創立した会社をクビになり、妻とも別居。娘とも気まずい状態。グレタは恋人に公私ともに裏切られたシンガソングライター。失意の中、友人にうながされて、バーでおずおずと歌い始める。全く、観客受けしないのだが、たまたま居合わせたダンは彼女に無限の可能性を感じる。こう書いてみると随分ドラマチックな印象があるが、とにかく登場人物に悪人というか嫌なヤツが出てこない。ダンは、職人肌だが、特別に思い込みが強いとか独善的というわけではない。だから、家族とも会社とも修復不可能な反目や決定的な決別というところまでは進まない。グレタも、エキセントリックなところがなく、ほどほどの常識人。だから、最初からダンとぶつかるようなこともない。最初から、二人は互いの信頼関係を築きながら徐々に壁を乗り越えていく。このあたり、ドロドロしたところが全くなくて、これがまあ現代的というか、今風なのかもしれないが、どうにも物足りない。

(私は、日常的に音楽を聴く習慣がないので、全く的外れだろうが)映画の中の楽曲は良質だとは思うが、心に残るというほどでもない。歌の成功によって、家族の再生にこぎつけたり、自らのアイデンティティの確認をしたりと、まあ、それで悪いことは何もないのだが、何か「健康に良い」料理を無理に食べているような味気なさがある。もっと脂身のたっぷり入った肉が食べたい、と思ってしまうのは、どうにも頭も感覚もついていけなくなっているからか。

『はじまりのうた Begin Again』 監督 ジョン・カーニー 2013年公開

 

※ 落ち目のプロデューサーというと、大昔に芦田伸介がテレビドラマ「海峡物語」(五木寛之原作)で演じた「艶歌の竜」を思い浮かべてしまうのだから、ついていけなくて当たり前か。そういえば、藤圭子のデビューストーリーは、「海峡物語」をヒントにしているようなことを何かで読んだことがある。藤圭子のデビューは私が中学3年生の時で、世の中の不幸を一身に背負ったような美少女の大人びたハスキーボイスは、歌にさして興味がなかった私でも鮮烈に覚えている。私の友人にも熱狂的なファンがいた。彼女の持つどこか不健康な匂いのする、あやしい魅力は今のアイドルには全く見かけないものだ。よくも悪しくもあの頃は、今より味の濃いものが多かったような気がする。

 

 

海峡物語 【五木寛之ノベリスク】

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「あやしい彼女」を観る  遅ればせながら倍賞美津子のファンになりました 

 寝っ転がりながら気軽に観ることができそうな映画だな、という理由でTUTAYAでレンタル。多部未華子のコメディアンヌぶりに納得しながら、楽しく観たのだが、観終わった後は倍賞美津子の印象に隠れてしまった。私より一世代は上の、この皺だらけの老女優がなんともカッコいい。

 

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図書館の憂鬱        

 

  久しぶりに、区立の中央図書館に行った。バスか電車を使えば30分ぐらいだが、それでも実際に出かけるとなると億劫で、早々頻繁には通えない。歩いて5分ぐらいのところに地域の図書館があるから、普段はそこを利用しているし、区内の図書館の蔵書はネットで予約をして、そこで受け取れるから、取り立てて中央図書館に行く必要はないのだが、それでも一月に一度か二度は出向きたくなる。地域の図書館も長年通っているから愛着があるのだが、最近、書架の間を巡っていると少し憂鬱になってくるからだ。

 

今すぐ読みたい!  10代のための  YAブックガイド150!

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「続・深夜食堂」を観る 渡辺美佐子の「豚汁定食」の味は?

 3編のエピソードから構成されている。最初の二つ「焼肉定食」「焼うどん」は低調で、あれっと思いながら見ていたが、「豚汁定食」で渡辺美佐子が登場すると、画面から目が離せなくなる。画面からというより、渡辺美佐子から、文字通り目が離せなくなるのだ。この高齢の女優の一つ一つのセリフ、ちょっとした表情の変化が、驚くほど瑞々しい。

 

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「波止場」を観る  名作の誉れ高いが……

 

 「波止場」を観た。波止場を暴力で支配するギャングに立ち向かう港湾労働者の姿を描いた映画だ。1954年のアカデミー賞8部門受賞作で、若きマーロン・ブランドの代表作。でも、少しも面白くなかった。これって、本当に名作なのか?

 

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貧困の基準  鈴木大介「最貧困女子」(幻冬舎新書)を読む

 

 先週、テレビドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班 」を見ていて、強烈な違和感を覚えたシーンがあった。捜査官が若いテロリストに聴取する場面だ。その青年(いや、少年か)、取り調べをする捜査官に年収を問いただす。捜査官は手取りで700万円ぐらいと答える。すると、青年は、やっぱり公務員はいいですね、うちの親父は450万円です、母のパートが100万円、家族一緒に住むのが大切ということで、家を建てたから、ローンが25年残っている。両親と大学進学の話をすると、奨学金か教育ローンの話になる。このまま大学に行っても、アルバイトに追われて自分のやりたいことはできない。世の中には親がかりでそんな苦労をすることなく、のうのうと大学生活をエンジョイしている奴がいる。正確ではないが、こんな内容だ。捜査官はそれにストレートに答えない。盗人にも三分の理か、というつぶやきは半ば以上、テロリストの理屈を認めているように取れた。

 両親合わせて550万の年収(手取りだと思う)、ローンがあるとはいえ、持ち家がある。奨学金や教育ローンを使えば、苦学かも知れないが、大学に行くことができる。もちろんなんの苦労もしないで、余裕を持って大学に進むことができる者と比べれば、確かに格差はある。

 だが、これが将来に絶望しテロしかないと思いつめるような格差であり、貧困なのだろうか。ドラマの登場人物だとはいえ、この青年の貧困の基準はなんなのだろうか。今の現実は本当に、このドラマのようであるのか。私には、どうにも納得がいかなかった。

 

最貧困女子 (幻冬舎新書)

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「聲の形」を観る  面白いのだが……。私は了見が狭いのかもしれない

 

 TSUTAYAの新作棚で見つけて思わず手が出た。昨年、大ヒットしたということは知っていた。それ以外の事前知識はなし。まっさらな状態で見始めた。定期テストが終わって暇ができたせいか、たまたま息子(中三)も一緒に見た。映像は新鮮。自然描写なども美しい。テンポの良い展開、丁寧な演出で還暦過ぎのおじさんにも飽きさせない。見終わったあと、息子がけっこういい映画だったね、という。うん、面白かった、と答えたがちょっと口ごもる。いや、面白かったのだ。良い映画だと私も思った。でも、見終わってみると、どうにも物足りなさが残る。はて、なぜなんだろう。

 

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「百年小説」(ポプラ社)を手に入れた アンソロジーは楽しい!

 

 この本、なにしろ、厚い。1333ページ。見た目は広辞苑というところか。日本の短編小説のアンソロジーなのだが、これほどのボリュームのものはこれだけだろう。とはいっても、作品数はそう多いわけではない。贅沢な作りなのだ。ネットオークションで手に入れたわりに、保存状態は良好で当時の「刊行記念クイズ」の応募ハガキが挟まっているのだが、そこには

《「森鴎外から太宰治まで、51人の傑作短編を1冊に」》

《「大きな文字」「総ルビ」で読む美しい日本語を愛する人たちの必読の書!》

というようなコピーが載っている。

www.poplar.co.jp

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私の積ん読状況  「積ん読」にも、一応言い訳がある

 

 連休が終わって、だいぶ経つが、やっぱりというか、予想通りというか、連休中に読もうと、文字通り、積んであった本は、それほど高さも変わらずあちこちに積まれたままである。 

 ベッドの脇には、高価なのに思い切って買った「竹山道雄セレクション」の第4巻、昭和文学全集(安岡章太郎が収録されている巻だ)、有吉佐和子「非色」、今野敏の新刊「回帰」「継続捜査ゼミ」、住野よる「また、同じ夢を見ていた」、木内昇「櫛挽道守」。

 玄関や居間には本川達雄「ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学」 、呉座勇一「応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 」、日垣隆「そして殺人者は野に放たれる」、カミュ「転落・追放と王国」、図書館から借りてきた池波正太郎全集の一冊、それにkindle paperwhiteと販売が終了しているSONY Reader PRS-T3S。そこに、ネットで手にいれた古本が何冊か。散らかしているのが嫌いなじいちゃんが、たまにチェッと舌打ちしているが気づかないふりをしている。

 

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学 (中公新書)

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