日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

成瀬巳喜男「あらくれ」を観る  「あるがまま」の世界はどう描かれたか

 

 高峰秀子が演じるお島は、現在も含めて、日本映画にはまず見当たらないヒロインだろう。お島が、勝気で、行動的で、時に亭主に手が出るほど男勝りだから、ということではない。その無節操、無道徳ぶりが際立っているからである。そういう意味で、このヒロイン像は空前絶後といえるだろう(これは非難しているのではない)。

 原作は大正期4年に読売新聞に連載された徳田秋聲の長編小説「あらくれ」。原作とは違う面も多いが、成瀬は原作をよく咀嚼しているのだろう。お島の浮き沈み多い波乱の半生を、成瀬巳喜男は、淡々と、非情に描いていく。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8c/Arakure.jpg/200px-Arakure.jpg

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やべきょうすけは、少しふっくらしたのではないか

 やべきょうすけは、少しふっくらしたのではないか。「闇金ウシジマくん ファイナル」を見ていてそう思った。ネットで調べると、43歳だからもう立派な中年なのだが、なんとなく惜しいのだ。

http://contents.oricon.co.jp/upimg/news/20150404/2051121_201504040744864001428144626c.jpg

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「湯を沸かすほどの熱い愛 」を観る 確かに沸かされた湯は熱かったけれど……

 妙な題名だなと思っていたが、見終わってみるとなるほどと思う。

 映画の作りは丁寧で映像も美しいし、テンポよく画面が進んでいく。宮沢りえ(双葉)、杉咲花(安澄)、鮎子(子役の伊藤蒼)、一浩(オダギリジョー)と、それぞれ演技もなかなかすばらしく、いろいろ感心するところがあるのにどうもすっきりしない。はて、なぜなんだろう。画面を見ながら、私はずっとモヤモヤとしていた。 

 

湯を沸かすほどの熱い愛 通常版 [Blu-ray]

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BS日テレ「土俵の神々~大相撲名力士伝説~大関・貴ノ花と5人のライバル」は、相撲ファン必見の番組だった。

 

 大した期待もしないで見始めたこの番組、相撲ファンにはたまらない、実に見ごたえのある好番組だった。

 司会は日テレの藤井恒久アナ、増位山太志郎、花田虎上、草野仁。

 BSだからなのか、話の内容もガードが緩い。内輪話、技術論、力士の寸評、知られざるエピソードなど、花田と増位山の話はどれも興味深く、時に鋭い。最後に花田虎上が見せた弟への微妙な感情に触れる際の複雑な表情などは、おそらく地上波ではなかなか見られない。

http://www.bs4.jp/guide/document/takanohana/img/title_11.jpg

 

 BS日テレのサイトにはこんな番組紹介が載っている。

 力士としては細身の体型ながら、驚異的な粘り腰と甘いマスクで「角界のプリンス」と呼ばれ、大相撲の歴史上、また日本のスポーツ史上屈指の人気を誇った大関・初代貴ノ花。ライバルとの激闘を追いながら、その生涯をたどります。

 

 5人のライバルは、輪島、高見山、北の湖、千代の富士、そしてあと一人はちょっとひねってあって花田家、という構成。往年の名勝負が次々へと披露される。

 

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半村良「小説 浅草案内」を読む 浅草は近いような、遠いような

 

 半村良の「小説 浅草案内」を読み終わった。先月、馬券を買いに行った帰りに錦糸町の熊沢書店で買い求めたものだ。以前に、図書館で借りて、最初の2篇ばかりを読んで、なんとなくそのあとを読みそびれて返却してしまったのだが、先月、三遊亭円歌の訃報が流れた時に、父が、そういえば円鏡も死んだんだっけ、とつぶやいたので、この本のことを思い出した。円鏡、8代目橘家圓蔵である。円鏡時代は、テレビに出ずっぱりの人気落語家だったので、前名の月の家円鏡の方が馴染みが深い。その橘家圓蔵と半村良が同級生だったということが、この作品の最初に出てくるのである。

 

小説 浅草案内 (ちくま文庫)

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なぜ、今、「人間失格」なのか  ビックコミックオリジナルで太宰治「人間失格」コミック版の連載が始まったが、

 

 以前は、何種類も買い求めていたマンガ雑誌(青年コミック誌といった方がよいのか)もすっかりご無沙汰になっているが、小学館の「ビックコミックオリジナル」だけは、今も定期的に購読している(これはもちろん理由があるのだが、それはまた別の機会に)。

 そのオリジナルが、3号続けて新たな作品の連載を始めた。

9号(4月20日号) 
「昭和天皇物語」 能條純一
原作/半藤一利(『昭和史』平凡社刊) 脚本/永福一成 監修/志波秀宇
10号(5月10日号)※現在の最新号
「人間失格」 伊藤潤二   原作/太宰治  
11号(6月5日号)※5月20日発売
「赤狩り」山本おさむ

 

ビッグコミックオリジナル 2017年9号(2017年4月20日発売) [雑誌]

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  • 作者: ビッグコミックオリジナル編集部,能條純一,半藤一利,永福一成,志波秀宇,やまさき十三,北見けんいち,弘兼憲史,坂田信弘,かざま鋭二,安倍夜郎,井浦秀夫,星野泰視,アガサ・クリスティー,ジョージ秋山,野村知紗,松本大洋,黒鉄ヒロシ,永松潔,高橋遠州,テリー山本,市田実,鈴木良雄,福本伸行,業田良家,あまやゆうき,稲井雄人,石原まこちん,曽根富美子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2017/04/20
  • メディア: Kindle版
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 62歳の不器用で、料理下手の半主夫にとって、魅力的なスーパーはどんな店か。

 

なんの参考にもならないだろうが、GWの暇つぶしに駄文を。

 

▶️はじめに

 まず、家族構成と私の立場をはっきりさせよう。

・私:62歳。60歳で定年後、親友の世話で再就職。自転車で10分のところで働いている。勤務時間は9時から4時だ。

・妻:55歳。教員。学校は相変わらずブラックで忙しい。出勤は6時40分。帰宅はほぼ連日8時。

・息子:中三。ハードな部活を健気に頑張っている(あまり上手くはないと思うが、当人はそう思っていない)。帰りは6時半。毎週火曜日はオフ。土日もほとんど練習か試合で、半日か終日を費やしている。週2回、朝練もある。この4月から、週3回の塾通いも始めた。

・じいちゃん(私の父): 92歳。肺気腫で入退院を繰り返したが、現在は在宅酸素で落ち着いている。体はあまり動かないが頭はしっかりしている。

 

▶️食事作りの分担

 私がリタイアする前は、ほぼ妻が全面的にまかなっていた。それから2年。次のように落ち着いている。

朝食:妻が準備。基本的に和食。彼女は朝味噌汁をつくることに執念を燃やしている。

昼食:妻と息子は学校で給食。私は、職場からもどり、朝の残り物だったり、弁当だったり、ピザトーストを作ったり、じいちゃんと二人で食べる。

夕食:月曜から金曜まで、私がつくる。土日は妻。

 

貝印 関孫六 4000ST 三徳包丁 165mm AB-5222

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「関の弥太っぺ」  錦之助にはほれぼれするが、だからこそ時代劇は遠ざかっていくのかもしれない

 時代劇専門チャンネルが、錦之介没後二十周年記念ということで主演作品を連続放映している。先日の「仕掛人梅安」に続いて、今回は世評高い「関の弥太っぺ」。長谷川伸原作の股旅物である。と、書いては見たものの、実は私には、長谷川伸も股旅物も解説するほどの知識はない。長谷川伸は「荒木又右衛門」といくつかの短編しか読んだことがないし、「沓掛時次郎」とか「瞼の母」「一本刀土俵入り」などは、なんとなく知っている程度である。股旅物とはいっても「次郎長三国志」とか「天保水滸伝」など、年を喰っている分、思い浮かぶものもあるが、そうそうなじみのある世界ではない。それでも、見はじめると、どこか懐かしい、よく知っている世界のような気がしてくる。

  

関の彌太ッぺ [DVD]

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白鳥の弔辞を読む  「白鳥随筆」正宗白鳥 講談社文芸文庫

 講談社文芸文庫の「白鳥随筆」をポツポツと読んでいる。巻末に著作目録と年譜が付いているのだが、正宗白鳥は83歳で昭和37年10月に亡くなっている。この本には、同年に発表された文章が3編載せられており、この作家が死の直前まで現役であったことがわかる。3編のうち1編は同じ年に数ヶ月早く亡くなった10歳年下の室生犀星への弔辞である。この弔辞が、白鳥らしくなかなか面白い。犀星と自分の作品を比較して弔辞としているのである。

 

白鳥随筆 (講談社文芸文庫)

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柚木麻子著「BUTTER」を読む 確かに上質な「バター」は濃厚で美味だが‥‥

 

 この作品が、死刑判決が確定した木嶋佳苗死刑囚の首都圏連続不審死事件をモチーフに書かれたものであることは新聞広告で知っていた。私は木嶋佳苗について、ニュースの報道程度しか知識がない。本屋で手に取った時、本の帯の惹句に「獄中から溶け出す女の欲望がすべてを搦め捕っていく」などとあるから、犯罪小説、推理小説に類するものかと思った。どうしようか迷ったが(殺伐とした小説を読むのが億劫になっているので)、結局、題名と印象的な表紙に惹かれて、ついつい購入。この著者の作品は「ランチのアッコちゃん」を読んだはずだが、あまり覚えていない(「和菓子のアン」とゴッチャに記憶されていた)。

 

BUTTER

BUTTER

 
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