日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

「張込み」(野村芳太郎監督)を観る  美しいモノクロ画面に繰り広げられる緊迫のサスペンス 

昔の映画を見ると、ついついあのころはこんな風だったんだな、というような風俗に目がいってしまう。 『あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 張込み』 [Blu-ray] 出版社/メーカー: 松竹 発売日: 2015/07/03 メディア: Blu-ray この商品を含む…

庄内柿をいただいて……いつから、柿がこんなに好きになったのだろうか

山形の叔母から父へ柿が送られてきた。父は94歳だから、年は離れているといっても、叔母も85、6歳にはなるのだろう。父が生き残っている兄弟では一番年上だから、3人いる叔母たちは随分気にかけてくれて、それぞれが携帯電話でしょっちゅう連絡してく…

ここ一週間に読んだ本・読み通せなかった本 「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良(文藝春秋)「高峰秀子 解体新書」斎藤明美著 (PHP研究所)「逆さに吊るされた男」田口ランディ(河出書房新社」

私は仕事を引退しているので、まあ隠居といってよいのだが、主夫の仕事はしなくてはならず、毎日が日曜日というわけにはいかない。平日の午前中は買い物や父の昼飯の用意、午後は洗濯物を入れたり、夕飯の支度をしたりとなかなか忙しい。なんといっても手際…

「妻は告白する」(増村保造監督)  見ているうちに、若尾文子にじわじわと絡め取られていく  

見ているうちに、男が次第に女の用意した蜘蛛の巣に絡め取られるようなゾクゾクした、寒気のようなものを感じてくる。どこかおかしいと思いながらも、糸に巻かれるように、男は身動きができなくなっていく。若尾文子には艶でいて、どこか清潔感のある不思議…

映画「点と線」(小林恒夫 監督)を観る  昔の清張映画もなかなか新鮮なのだが……  それにしても、高峰三枝子は見事なほど美しい。

「点と線」著者の最初の長編推理小説であり、松本清張ブームを巻き起こした作品であり、「ゼロの焦点」とともに、清張初期の推理小説の代表作だが、基本は時刻表トリックを使ったアリバイ崩しのどちらかといえば、地味な作品であり、いまの若い人にとっては…

先崎学「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」(文藝春秋社)を読む   こんなに近くにうつ病があった!

闘病記である。私が、滅多に読まないジャンルの本だ。だが、あの「天才先崎」がうつ病?棋界きっての文才を誇る先崎学がうつ病になったのか。本屋の店先で思わず手に取った。10ページほど読んで、すぐにレジに向かった。多才な棋士である先崎学に何が起こ…

山本周五郎「五辯の椿」を読む  復讐劇の仕掛けは…… 

何十年ぶりかの再読である。根気がなくなっている昨今には珍しく、一気に読んだ。若い女の復讐劇。母「おその」とその愛人を焼き殺し、母の遊び相手だった男たちを色仕掛けで惑わせ、次々にかんざしで刺し殺していく。よくよく考えれば、ヒロイン「おしの」…

BS1「アスリートの魂 いつだって その“心”で~大関 栃ノ心~」を観る  にわかファンが、本当のファンになった

秋場所の鶴竜対栃ノ心の取り組みには本当にびっくりした。横綱鶴竜は10戦全勝。カド番大関栃ノ心は6勝4敗。これからの対戦相手を考えるとあとがなかった。立ち合い低くあたった鶴竜は、双差し。絶体絶命の栃ノ心は、肩越しに両上手をとり、苦肉の策とも…

西村寿行「滅びの笛」を読む  ネズミのパニックの話だが、別の話に思えてきて……

この作者の作品は、一時期続けざまに読んだ記憶があるから、この作品も読んでいるはずだが、うっすらとしか覚えていなかったので新鮮に読めた。中部山岳地帯で大量発生した鼠群と人間との闘いを描いたパニック小説。刊行が1976年。この頃、「タワーリング・…

小野寺史宜「ひと」(祥伝社)を読む  スラスラ読めるのだが……

初めての作家。つい手にとったのは、本の帯につられて。 「本の雑誌が選ぶ2018年度エンターテイメントベスト10 第2位」 「心洗われる、本物の感動で重版続々!!」 「おお、どうしてこんなところで涙があふれてくるのだろう」 ひと 作者: 小野寺史宜 出版社/…

加地伸行「マスコミ偽善者列伝 建て前を言いつのる人々」(飛鳥新社)を読む   バッサバッサと切れ味鋭く……

こういう斬られ方をすると、当事者は心身ともにかなりこたえるだろうな、と読みながらなんども思った。 著者は、大阪大名誉教授、加地伸行(82歳)。本書は産経新聞連載のコラム「古典個展(こてんこてん)」等をまとめたものである。著者の専門は中国古典…

NHKドラマ「透明なゆりかご」(第9回)を観る  清原果那に釘付けになる

主演の清原果那は十六歳だそうだ。だが、堂々たる主演ぶりである。このまだ少女といってよい女優から、目を離せない。 「透明なゆりかご」は、産婦人科の過酷な現実を捉えながら、命の価値や意味、親子や夫婦の絆、子育てと生活の現実、医師や看護師の倫理等…

森敦「月山」を読む つまらなくはないが、ではどこが良いのかといわれると……

私が大学生の頃、芥川賞を受賞した作品で、著者の森敦は六十二歳だったので、遅咲きの作家の受賞ということで当時随分話題になったのを覚えている。友人が購入したものを借りたのだが、結局読まずに返してしまった。 今回、この小説を読んだのは個人的な事情…

山本周五郎の短編を読んで、なるほどそうなのかと思ったこと

文春文庫から沢木耕太郎編の山本周五郎の短編集シリーズが4冊出ている。山本周五郎というと新潮社というイメージがあるが、多分著作権が切れた関係なのか、各社から選集だの、文庫本などが刊行されはじめている。 長編全集は何年か前に刊行されたものを持っ…

BS日テレ「密着!すもう部屋物語~第三幕~」を観る 国技っていうけれど

大相撲九月場所が始まった。初日、二日目と稀勢の里がなんとか勝った。初日は、怖くて見てられなかった。今日の貴景勝との取り組みもスリル満点だった。観客の歓声と拍手が鳴り止まない。やはり日本人横綱への期待と愛着は、国技だから格別のものがあるのだ…

山里亮太「天才はあきらめた」(朝日文庫)を読む  「熱く」て「暑苦しい」のだけれど……

文庫の帯に「あの実力があって慕われていないとなると、よっぽど人望がないのだろう」(若林正恭)とある。ずいぶん刺激的な惹句に、ついつい手にとった。お笑いは嫌いではないが、芸人やタレントの本を読みことはほとんどない。だが、手に取ると朝日文庫だ…

「新・平家物語」を観る  市川雷蔵のゲジゲジ眉毛

この映画で平清盛を演じる市川雷蔵はゲジゲジ眉毛だ。端正な顔と不釣り合いな、いかにも作り物めいた、この眉毛に、最初は強烈な違和感があったのだが、映画が進むにつれてあまり気にならなくなった。雷蔵はどちらかといえば華奢で荒々しさには程遠い。ゲジ…

勝新太郎の「王将」を観た  勝新はいつでもやっぱり勝新だった!

日本映画専門チャンネルでカツライス劇場という企画をやっている。大映の二枚看板だった雷蔵と勝新の映画を定期的に放映する企画だ。 HPの惹句はこんな感じだ。 大映が誇った奇跡の2枚看板、勝新太郎・市川雷蔵。 両名の名前から“カツライス”と称された2人の…

「追憶」を観た  富山は美しいが、ドラマはどこかで観たような

子どもの頃の犯罪を、ひた隠しにして生きてきた3人の男が25年後、刑事と被害者と容疑者として再会する。こういうパターンの作品は、どこかで観たような気がする。 不幸な生い立ちや環境の3人の子ども。苦界から、逃げ出してひっそりとやり直そうとする女、…

 ランドセルが重すぎるから置き勉を認める? 文科省は小学校の教室を見たことがないのだろうか。

子どもたちのランドセルなどが重すぎるという意見を踏まえて、文科省は宿題で使わない教科書などは教室に置いて帰ることを認めるよう、全国の教育委員会に対して求める方針、という記事を読んだ。具体的には、家庭学習で使用しない教科書や、リコーダーや書…

「その夜の侍」を観る  堺雅人と山田孝之は熱演だが

ケーブルテレビで放映されたものを録画して観たのだが、途中、何度も止めて、コーヒーを入れたり、ヨーグルトを食べたり、タバコを吸ったりした。劇場だったら、我慢できずに途中で出口に向かっているはずだ。お金、損したななどと愚痴りながら。 その夜の侍…

とりとめのない名前の話など

最近、またポツポツと田宮虎彦を読み返しているのだが、『比叡おろし』という哀切な短編小説を読んでいて、ふと記憶を呼び覚まされる一節があった。それは、全く個人的な記憶であって、作品の中身とも作者の田宮虎彦とも全く関連がない。 主人公の苦学生が、…

一気に読んだのは読んだのだが 彩瀬まる「あのひとは蜘蛛を潰せない」(新潮文庫)を読む 

題名に惹かれて読み始めた。 主人公の梨枝は28歳の独身女性。ドラッグストアの店長で、両親は幼い頃に離婚したため母と二人暮らし。地味で、真面目で、ある意味世間知らずで、男性経験もないし、恋人もいない。その梨枝に年下の恋人ができて、紆余曲折を経…

「不機嫌な赤いバラ」を観る  シャーリー・マクレーンから目が離せない

原題は「Guarding Tess」。「テスのお守り」というところか。見終わって久々に満足した。小品だが、なんとも洒落たコメディ。画面が進むに連れて、初めは身勝手で傲慢な婆さんにしか見えなかったシャーリー・マクレーンが、なんともチャーミングな愛すべき存…

『はじまりのうた Begin Again』を観る 何かとりとめなくて

かつては辣腕だったが、今は落ち目のプロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)が、無名のシンガーソングライター、グレタ(キーラ・ナイトレイ)と出会って、夢よもう一度、というストーリー。うーん、よくある話だが、何かサラサラしていてとりとめがない…

「あやしい彼女」を観る  遅ればせながら倍賞美津子のファンになりました 

寝っ転がりながら気軽に観ることができそうな映画だな、という理由でTUTAYAでレンタル。多部未華子のコメディアンヌぶりに納得しながら、楽しく観たのだが、観終わった後は倍賞美津子の印象に隠れてしまった。私より一世代は上の、この皺だらけの老女優がな…

図書館の憂鬱        

久しぶりに、区立の中央図書館に行った。バスか電車を使えば30分ぐらいだが、それでも実際に出かけるとなると億劫で、早々頻繁には通えない。歩いて5分ぐらいのところに地域の図書館があるから、普段はそこを利用しているし、区内の図書館の蔵書はネット…

「続・深夜食堂」を観る 渡辺美佐子の「豚汁定食」の味は?

3編のエピソードから構成されている。最初の二つ「焼肉定食」「焼うどん」は低調で、あれっと思いながら見ていたが、「豚汁定食」で渡辺美佐子が登場すると、画面から目が離せなくなる。画面からというより、渡辺美佐子から、文字通り目が離せなくなるのだ…

「波止場」を観る  名作の誉れ高いが……

「波止場」を観た。波止場を暴力で支配するギャングに立ち向かう港湾労働者の姿を描いた映画だ。1954年のアカデミー賞8部門受賞作で、若きマーロン・ブランドの代表作。でも、少しも面白くなかった。これって、本当に名作なのか? 波止場 [Blu-ray] 出版社/…

貧困の基準  鈴木大介「最貧困女子」(幻冬舎新書)を読む

先週、テレビドラマ「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班 」を見ていて、強烈な違和感を覚えたシーンがあった。捜査官が若いテロリストに聴取する場面だ。その青年(いや、少年か)、取り調べをする捜査官に年収を問いただす。捜査官は手取りで700万円ぐらいと…