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日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

狼たちの処刑台 マイケル・ケインのカタルシス

映画ー洋画

 イギリスのEU離脱をめぐる国民投票の報道を見ていて、同じような政治体制の国なのだが、どこか日本とは決定的に違うという印象がしてならなかった。イギリスに行ったことはないし、さしたる知識も持ち合わせていないのだが、国論を二分する議論の結果はさておき、インタビューなどを見ていると、元々、国民の間に一体になれない分裂した意識があるような気がした(連合王国ということとは、またべつに)。

 この映画は、CSで見たもの。なんの予備知識もなく見たのだが、この映画を見た後のカタルシスは私が老いたゆえのものなのだろうか、と少し戸惑った記憶がある。

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狼たちの処刑台

 マイケル・ケイン主演のイギリス映画。邦題はチャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」が頭にあってつけられたのだろうか。「狼よさらば」は、丸の内東宝でリアルタイムで観ている。主人公のチャールズ・ブロンソンは強盗にあって妻を殺され、娘はショックで精神に異常をきたす。その後は、詳細に覚えていないが、街中で犯罪者を銃で次々に処刑していく。ごく普通の市民という設定だから、初めて銃で処刑した後、嘔吐するシーンがあって印象的だった。  

 この映画の主人公ハリー・ブラウンは、もう70歳を過ぎた老人で、年金暮らしで団地住まい。妻は入院中で唯一の楽しみは親友とチェスを打つこと。団地は落書きだらけで、部屋から見える地下道には不良少年や麻薬の売人たちが巣食っていて街の治安は悪い。これが、今のイギリスの現実なのかどうなのかはわからないが、暗い画面が続く。ある日、トンネルを迂回することを迫られたせいで危篤となった妻の死を看取れなくなってしまった。その上、唯一の親友が不良たちに逆らって殺される。絶望の中で、警察に期待できないことを知ったハリーは、復讐を決意する。  

 復讐?ヨボヨボとまではいかないにしても、足元が覚束ない老人がどうやって?チャールズ・ブロンソンはせいぜい初老という年恰好だったし、まだ仕事をしている現役だった。マイケル・ケインのハリーに、何ができるのか。ハリーが、退役軍人という設定でこのハードルを物語は見事に超えていく。殺す相手を追っていって、苦しくなって倒れたりするが、この老人ヒーローは奇妙なカタルシスを与える。年取っていてどう見ても強そうではないが、強くても不思議はないという存在なのだ。

 マイケル・ケインは若い時に見た「探偵(スルース)」が強く印象に残っている。この映画、はじめからマイケル・ケインのために作られた映画なのか、それとも後からキャスティングをしたのか知りたくなった。  

 それにしても、なんとも活気のない街。日本もいずれそうなるのかというような寒々とした気持ちにもなった映画であった。