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日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

雑巾と英雄  私の中学時代

回想

雑巾と英雄  私の中学時代

 私は、中学時代は優等生だったが(高校時代は、劣等生に転落した)、どうも一言多いのか、実はけっこう怒られた。入学して次の日、学活の時間に先生の説明に茶々を入れて(内容は忘れたが)、教壇に正座させられた(その頃は、黒板の前に一段高い教壇があった)。

 担任の男性教師、Y先生からすれば、当然最初が肝心と思ったのだろう。だが、まだ事態の重要性を理解していない私は、照れ隠しに友達に合図を送ったりした。すると、Y先生がそれに気づいて、おとなしく座ってろ、といっただろ、と私の襟足のあたりの髪の毛を引っ張る。これが妙に痛い。イテテ、と腰を浮かすと、だから座ってろといったろ、と第二弾にこめかみの毛を引っ張られる。これは、涙が出るほど痛い。教室は爆笑となり、痛いやら恥ずかしいやらで、私は顔を真っ赤にすることになった。今なら、立派な体罰だろうが、級友たちはまあどこか半分ゲームのような、冗談のような感覚で受け取っていたし、だれも何も問題だとは考えなかった。

 Y先生は四十代だったのだろうか。痩身でどこか飄々とした雰囲気の先生だった。口数が少なくちょっと訛りがあった。滅多に怒らない先生だったが、どこか他の先生にない威厳があったので生徒には怖がられていた。それ以降、私は、特にY先生には怒られていないのだが(他の先生には怒れられたが)、一度、クラスの男子全員でひどく怒られたことがある。

 

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 その時、私たちはクラスの男子全員で、体育館の掃除をしていた。掃除をサボる、というのはいつの時代でも同じで、その時も、最初は一生懸命やっていたのだが、監督している先生がいなくなったためか、そのうち何人か遊び始めた。体育館の天井の梁に雑巾を引っかけるという遊びである。最初の一人が成功すると、そのうち競争になった。みんな夢中になってしまった。気づいた時は、随分たくさんの雑巾が天井の梁に引っかかることになった。

 そこにY先生が来た。

「何だ、あれは。おまえたちで責任をとれ。」

Y先生は真っ赤になって怒った。それから、そのままプイと体育館を出ていってしまった。こんなに怒った先生は、初めてだった。

 困ったことになった、どうすればよいかと鳩首会議。結局、梁に登って、足で落とすという案が可決。さて、だれがやるか、Aが名乗り出た。

 Aは、舞台の袖から天井の梁に登った。

 残りの者は、下で、マットをもって落ちてきた時の用意をする。

 Aは、両手でつかめるところを探しながら、そろそろと梁の上を歩き、雑巾を足で落としていく。

「おーい、大丈夫かぁ。」

 大丈夫なわけはないが、そこは男の子、うん、と見栄をはってうなずく。

 四つ、五つ、落としたところで、先生が戻ってきたのではないかと思う。

 私たちは再び大目玉を食らった。

 そのあとの話をすると、先生も校長に大目玉を食らったらしい。

 Aはどうなったか。

 もちろん、彼はしばらくの間、英雄となり、このあと、卒業まで一目置かれることになった。

 もう半世紀も前のことだ。何とも愚かしくも、のんびりとした時代だった。

 

 今、その中学校に息子が通っている。入学式や保護者会、文化祭などで体育館に何回か入った。体育館は、とうに建て替えられているが場所は変わっていない。行くたびに、ついつい天井を見てしまう。

 息子も、みんなで天井を見上げるような中学時代を送っているのだろうか。

 

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