日付のない便り

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『失われたものの伝説』 砂漠のジョン・ウェイン

『失われたものの伝説』  

 ジョン・ウェインというと、テレビや名画座で結構な本数を見ているが、真っ先に思い起こすのは、なぜか西部劇ではなくて、この映画と「静かなる男」だ。

『失われたものの伝説』は中学生の時、テレビで見て忘れがたい映画の一つになっていたのだが、DVDが販売されていないようで、もう一度見たいと思っていてもなかなか叶わなかった。1年ほど前に、CS放送で放映したので、ようやく見直すことができた。監督はヘンリー・ハサウェイ。1957年公開のアメリカ映画である。

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 舞台はサハラ砂漠。幻の古代都市に財宝を探しに行くという話。今風に言えば、トレジャー・ハンターというわけだが冒険映画というわけではない。猛烈な砂嵐のシーンはあるが、特別にアクションらしいシーンがあるわけではなく、静かな愛憎劇といったほうがよい。登場人物は3人だけだ。宝を探しにきたフランス人ポールにロッサノ・プラッティ、砂漠の案内人ジョーにジョン・ウェイン、無理やり同行する娼婦ディダにソフィア・ローレン。

 サハラ砂漠に消息を絶った宣教師の父を持ち、知的で思いやり深いフランス人。自分を人間らしく扱ってくれた男にすがりついて、あきらめていた人生をもう一度取り戻したいと願う娼婦。そして、この世の果てでたくましく生きる男。

 今のアメリカ映画なら、波瀾万丈の冒険談になりそうな素材だが、この映画は登場人物3人の変容と心の葛藤の物語として進んでいく。

 困難な旅が続くが、ポールの父の言葉通り、3人は失われた都にたどり着く。フランス人はそこで父親の思いがけない秘密を知ってから、精神のバランスが崩れ、欲望をむき出しにする。娼婦は一度は夢見た自らの再生の希望を絶たれ、新たな屈辱に絶望する。

 ジョン・ウェインは最後まで、弱音を吐かない。さまざまな葛藤や不信、予期せぬ裏切り。じっと耐えるというのではない。自らの矜持を保ってやれることに取り組んでいく。微妙な感情の波に揺れながら、最期まで姿勢を崩さずに必死にソフィア・ローレンを守っていく。映画が進むにつれて、粗野で荒々しい最初の印象が薄れていき、誠実な男の姿が現れてくる。共演が、ヨーロッパの俳優のためか、この映画のジョン・ウェインは、西部劇で見せる豪放さ、男らしさ、とは別の魅力を放っていた。

 ロッサノ・プラッティもなかなか上手い。娼婦のソフィア・ローレンにも紳士的にふるまっていた男が、人が一変したようにだんだんいかがわしい男に変貌していく。知的で端正な二枚目なだけに、余計に人の持つ浅ましさを感じさせる。ジョン・ウェインとの対比を考えるとなるほどと思わせるキャスティングだ。

 そして、ソフィア・ローレン。顔の造作の一つ一つが規格外のように大きいのだが、それが大柄な肢体とマッチして、人を引き寄せる抜群の美貌を作っている。アメリカの女優にはない眼差しの深さに吸い込まれるような魅力を覚える。この映画でも、娼婦の役であるのにまったく下卑た印象を与えない。美貌だけではなく、確かな演技力でこの映画を支えている。      

 それにしても、砂漠や失われた都の映像がロマンチックで、どこか破滅的な雰囲気を漂わせながら、最後は二人が助かるのはやはりアメリカ映画らしい。

 見直してみると、細部まで、かなり正確に覚えていた。中学生の時、この映画を私は夢中で見ていたのだが、この剥き出しのドラマの何にそんなに惹かれたのだろうか。自分でも、ちょっと不思議な気分になる。

 

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ソフィア・ローレン 生きて愛して

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