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『冬の嵐』 最近、年とともにサスペンスは苦手になっていたが……

『冬の嵐』

  アーサー・ペン監督、メアリー・スティンバージェン主演のサスペンス映画。予備知識がなく、さして期待もせずに見始めたのだが、これがなかなかハラハラドキドキさせる映画で見ごたえがあった。

 

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 冒頭、冬の夜に、人気のない駐車場でなんらかの取り引きに臨んだ女が、車中で殺され薬指を切り取られる。

 売れない女優ケイティは、“代役募集”の広告に誘われてオーディションを受ける。審査員のマレーはケイティを一目見ただけで採用。ケイティは足を怪我している夫ロブを残し、零下40度の冬の嵐をついて、マレーに連れられ、プロデューサー、Dr.ルイスの家に向かう。

 映画の仕掛けや伏線が凝っていて、小道具の使い方もうまい。殺された女、その姉、そして女優の三人が、瓜二つという設定は、無理があるようでいて、実はよく考えられている。ケイティが死んだ女に(その姉にも)瓜二つであることと、女優であることが、この映画のサスペンスの根源になっているからだ。途中でケイティの指が切り取られるが、この指がないということも、このヒロインの生き残りをかけた戦いのキーポイントになっている。屋敷に向かう途中、ガソリンスタンドでおまけとして貰った金魚、自動ピアノ、何気なく語られる熊の剥製のこと、などが、最後の場面に生きてくる。驚かせ方も堂に入ったもので、見ていて、ついついヒロインと同じように息の止まるような思いをする。アーサー・ペンの見事な手腕が随所感じられる。ただ、後味のよい映画ではないので、好みは分かれるか。

 メアリー・スティンバージェンは一人三役。主演作品を見るのは、初めてだと思う。どちらかといえば、地味な顔立ちの女優だが、演技力は確かなものがある。

 ただ、この映画の成功は、精神科医であるDr.ルイス役のヤン・ルーベスと、かつての患者で今はルイスと同居し、世話をしているマレー役のロディ・マクドウォールによるところが大きい。特に、ちょっとした仕草や言葉の端々に、隠しきれない狂気を垣間見せるロディ・マクドウォールの印象は強烈だ。かつての『我が谷は緑なりき』の名子役の面影は、この役からはまったくうかがえない。

 こういう映画を見たのは久しぶりだ。最近は、年とともに、サスペンスやスリラーは苦手になって、なんとなく避け気味だったが、質の良いものに当たると、また良いものを見てみたいと妙に意欲が湧いてきたりするのだから、誠に勝手なものである。

《監督》アーサー・ペン  1987年 アメリカ映画

 

 

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後記 

 ・原題は「Dead of Winter」。『冬の嵐』という邦題は芸がないか。

 

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