日付のない便り

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『プレイボール2』 谷口くん、再び

 初めて「グランドジャンプ」という雑誌を買った。表紙はもちろん、谷口くん。『プレイボール2』の新連載が始まった。三十数年ぶりの復活。作者のちばあきおは早くに亡くなっている。『グラゼニ』のコージィ城倉が、続編を引き受けるという大役に着いた。

 「奇跡の続編、開始!」という惹句に、期待と不安が入り混じる。

グランドジャンプ 2017年 4/19 号 [雑誌]

 

 河原のグラウンドで後輩を指導する井口、二層式の洗濯機を谷口の家に届ける田所、都予選の案を練る谷口、ガサツだが温かい大工の父親と母親、倉橋、丸井、イガラシらの登場、そして井口とイガラシの対決へ。

 続編の連載に当たって、コージィ城倉の選択は、「プレイボール」からの完全な連続だったらしい。まずは、一ミリたりともずらさないで接続する、という意志が感じられる。これまでの読者には、田所が谷口の母親相手に洗濯機のセールスの練習をするエピソードが思い出されるだろうし、谷原高に練習試合で負けて、墨谷高の層の薄さをどうするか悩む谷口と倉橋に気がつくだろう。『キャプテン』の読者は、イガラシの前に井口が小学校からのライバルとして何度も立ちはだかってきたことを思い出すだろう。谷口の背丈を少し伸ばしたりしながらも、ほとんど絵に違和感はない。まずは上々の滑り出し。

 たぶんこれから私は「グランドジャンプ」を購読してしまうに違いない。

 

 『プレイボール』の連載が始まった時、私は高校3年だった。コージィ城倉氏は、マンガの後にのっているインタビューの中で、

 

 『プレイボール』が「週刊少年ジャンプ」に連載されていた時は、それほど人気がなかったのじゃないかと思う。同時期に一緒に載っていた作品は、刺激的なものがいっぱいあったから。

 

 と述べているが、これはその時リアルタイムで読んでいたものの実感からはずいぶん遠い。子どものころの野球マンガといえば、『ちかいの魔球』や『黒い秘密兵器』だったが、何と言っても一世を風靡したのは『巨人の星』だった。私も夢中になって読んだ口だが、その色の濃さはどこか暑苦しく、次第に辟易していった。究極の魔球「大リーグボール」は、高校生のころには随分色褪せて見えたものだ。そのころ登場したのが、谷口くんだった。あっさりとした白っぽい絵柄、等身大の平凡な主人公、淡々と進むストーリー。この魔球の出てこない野球マンガに、引きこまれていったのは、私だけではなかったと思う。『プレイボール』が連載されるようになってから、私はそれを読むためのだけに「週刊少年ジャンプ」を毎週買い求めるようになった。いつか、単行本も揃えて、繰り返し読むようになった。「プレイボール」は、間違いなく「少年ジャンプ」の部数を伸ばしたはずである。

 星飛雄馬(キラキラネームの元祖か?)も山田太郎も非凡なネーミングだと思うが、どこにでもありそうな、谷口くん、のネーミングも決して負けてはいなかったと思う。

 今回の続編、勇気のいる挑戦だと思うが拍手を送りたいと思う。谷口くんと墨谷高の夏の甲子園への挑戦が楽しみになった。

 

 

後記:

 昨年、オークションで「キャプテン」「プレイボール」を改めて全巻揃えた。中学生の息子が、本棚に残っていた「キャプテン」の幾冊かを読んで、続きを読みたがったからである。2週間ぐらいして、これ続きはどうなってるのと聞かれた。時代を超えて、息子の中にも谷口くんの名前は確実に刻まれたらしい。 

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