日付のない便り

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 ランドセルが重すぎるから置き勉を認める? 文科省は小学校の教室を見たことがないのだろうか。

 

 子どもたちのランドセルなどが重すぎるという意見を踏まえて、文科省は宿題で使わない教科書などは教室に置いて帰ることを認めるよう、全国の教育委員会に対して求める方針、という記事を読んだ。具体的には、家庭学習で使用しない教科書や、リコーダーや書道の道具などについては、施錠ができる教室の机やロッカーに置いて帰ることを認めるよう求めているのだそうだ。

 私は、東京近郊の公立学校の教員として35年勤めたが(そのうち10年ほどは教育行政の一員として)、個人用の鍵付きロッカーや鍵付きの机を使用している小学校に出会ったことがない(中学校でも見かけたことはない)。私立の学校ならあるのかもしれないが、公立学校の教室のロッカーは単なる棚であり、扉がついているのもまれであろう。それぞれの地域で学校の造りは違うから、私がものを知らないだけなのかもしれないが、それにしても、全国の教育委員会は通知を受け取って、どう対処するのだろう。

 

 

 ランドセルが重いのか、それとも中身が重すぎるのか、多分両方なのだろうが、いずれにせよ、全く具体的な方法を示さず、各教育委員会や学校でなんとかしろと言うのは、あまりに乱暴で無責任だ。

 

 ランドセル自体は、年々色合いやサイズ、重量、機能性などを改善し、昔に比べれば、随分使い勝手が良くなっている。それでも、6年間使うために頑丈にできており、軽くはない。

 だが、ランドセルは重いから他のバッグにしよう、とは文科省はいわないようだ。もし、全国的にランドセルは禁止、といったらどうなるだろう。

 ランドセルに、親や祖父母などは特別の思い入れがある。子どものランドセル姿は、家族は格別の喜びや感慨を覚えるのは、この国の習わしといってもよい。6年間使うのだからと自分に言い聞かせて、多少高価であっても、無理をしてよいものを購入する。ランドセルのない通学風景は寂しいと感じる人も多いはずだ。

 だから、中身をなんとかしろというはどうにも無理がある。

 

 例えば、具体的に学校がその方針に沿って対策を立てるとしたらどうなるだろうか。

 物理的な面では以下のことが考えられる。

 1 教室のロッカーに扉を付けて、鍵をつける。

 2 鍵の管理方法とそのためのスペースを学校内に設ける。

 3 机の中の道具箱も鍵付きのものに変える。

 ※ 鍵の選定については 鍵は、子どもが頻繁に無くしたり壊したりすることや、忘れ物をした場合に学校側が開けられることなどからどのような種類のものがよいのか、議論が必要だろう。

 

 指導面では次のような準備と指導が必要になる。

 1 鍵の使用についてのルールを作る(児童用&教員用)

 2 置いていってよいものと持って帰らなければいけないもの、ロッカーに入れるものと机の中に入れるもののルールも作る

(学校全体、学年、学級、それぞれがある程度同じルールでなければトラブルが生じる。)

 3 児童向け、保護者向けのマニュアル(?)を作成する

 4 学年だよりや学級だよりなどで、置いていってよいものや持って帰らなければならないもののスケジュールを家庭に知らせる。

 5 鍵がかかることによって生じると予想される生徒指導上のトラブル等への対処を準備しておく(鍵がなくなった、誰かが隠した、必要以上にたくさんのものをおいていって空っぽのカバンで帰る、毎日のように忘れ物を取りに来る、ロッカーを私物化してものを隠す、等々)。

 

 ちょっと考えても、うんざりするほど煩瑣なことが学校に降って来る。小学校で置き勉がよいなら、中学校でもということになる。中学校では、生徒指導上のこともあって、小学校以上に混乱するだろう。

 

 実際に詳細なデータに基づいたもので、現場の意見も取り入れてのことなのだろうか。地域差を相当あるはずで、全国一律の扱いが適切かどうかも疑問が残る。 

 テレビを見てたら、どこかの大学教授が小学生のランドセルの重さを図って、データ化し、健康に悪い、腰痛が増えていると、根拠らしきものを示していた。しかし、なぜそんなに重たいのかということは、どのように分析され、結論づけられているのだろうか。ランドセルが原因の腰痛はどの程度深刻なのだろうか。もし、極めて深刻ならば、こんなにアバウトな対策ですむのだろうか。

 経験則的にいえば、時間割通りに準備をして、必要なものだけを入れれば、それほど毎日重いカバンになるとは思えない。いや、前と違って、教科書が厚くなったりして大変なんだ、というなら、教科書の分冊化に予算をつけるとか、副教材をもっと制限するとか、文科省が指導できることはたくさんあるはずだ。

 そんなにランドセルが重いなら、ランドセルに換わる、軽量で、安価で機能的で、デザイン的にもランドセルを凌駕するようなバッグを、文科省が旗を振ってでも開発したらどうか。

 

 文科省は小学校の教室を見たことがないのだろうか。小学生のカバンの中身を見たことがあるのだろうか。新学期が始まってどこの学校もてんてこ舞いの忙しさだろう。悪い冗談はやめにした方が良い。余計なことを考えるなら、収賄にいそしんだり社会探訪でもしていてもらった方がまだ迷惑がかからない。

 

▶︎私自身には、ランドセルに特別な思い入れはない。 

▶︎私の世代は、ペギー葉山の「学生時代」という歌の「重い鞄を抱えて 通ったあの道」という一節にノスタルジーを憶えたりするのだが、そういうこととは別に、学習面でのデメリットなどについても考慮されているのだろうか。報道では、その辺りは触れられていないが。