日付のない便り

日々のとりとめのない覚書 映画や読書 そして回想

ここ一週間に読んだ本・読み通せなかった本 「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良(文藝春秋)「高峰秀子 解体新書」斎藤明美著 (PHP研究所)「逆さに吊るされた男」田口ランディ(河出書房新社」

 私は仕事を引退しているので、まあ隠居といってよいのだが、主夫の仕事はしなくてはならず、毎日が日曜日というわけにはいかない。平日の午前中は買い物や父の昼飯の用意、午後は洗濯物を入れたり、夕飯の支度をしたりとなかなか忙しい。なんといっても手際が悪いというか、要領が悪いというかけっこうそれだけで時間がかかるのである。休日は、ありがたいことに妻が主婦業に戻ってくれるので自由に使える時間が増える。だから、三連休ともなると、いつもよりまとまった読書ができる。そこで、「積ン読」の山を崩して、何冊か用意していたのだが、予定外の外出があったり、選んだ本のチョイスの問題や、それ以上に体力や根気の不足が響いて、何のことはない、普通の土日並みにも満たない読書量に終わった。

 読んだ本は、読書記録も兼ねて、できるだけブログの記事にしようと思っているのだが、今回はまとめて寸評を叙することにした(まあ、いつも寸評なのだが、ここは本当に短い感想ということで)。

 

僕が殺した人と僕を殺した人

僕が殺した人と僕を殺した人

 

 

▷読んだ本1「僕が殺した人と僕を殺した人」東山彰良(文藝春秋)

 本の帯に「読売文学賞」と大きく記されている。確か、この人は直木賞作家だったけど、ミステリーじゃなかったっけ、と思いながらも(私は、警察小説とかスパイ小説は別だが、ミステリーのハードカバーは買わない)、表紙の魅力に負けて購入。台湾を舞台にしていてことから、名前とか地名とかが衰えた頭に入らず、総ルビにしてくれればいいのになどと愚痴りながら、最初は行きつ戻りつしながら読んでいたが、途中からぐんぐんと引っ張られることになった。

 ユン、ジェイ、アガンとダーダーの兄弟。この小説は、4人の少年の成長小説であり、青春小説であり、仕掛けたっぷりのミステリでもある。猥雑で混沌とした台湾社会の中で翻弄されならも、懸命に駆け抜ける少年たちの友情、裏切り、野心、挫折、諦念などが、彫刻刀で削るように次第に鮮明な姿を表していく。

 読み終わってみると、台湾の歴史や社会を背景とした大河小説の趣があり、ミステリー仕立てなのは見事なのだが、かえって邪魔な気がする。

 読み損なっている「流」も読んでみようか。

 

高峰秀子 解体新書

高峰秀子 解体新書

 

 

▷読んだ本2 「高峰秀子 解体新書」斎藤明美著 (PHP研究所)

 このところ、「乱れる」「カルメン故郷に帰る」と、2本の高峰秀子の映画を見て、改めてこの女優に興味を持った。そこで、図書館から借りてきたのがこの本。

 筆者は、元週刊文春の記者で高峰秀子、松山善三夫妻の養女になった女性である。高峰秀子に関する著作を、何冊も上梓しているが、この本はいわば高峰秀子の入門書としては、コンパクトにまとまっている。

 第1章は「キーワードで読み解く高峰秀子86年の人生」と題して、高峰の子役時代からスター女優としての絶頂期までの軌跡、複雑な家庭環境、松山善三との結婚、随筆家としての横顔、55歳での引退、その後の生き方まで、興味深いエピソードや談話を交えながら、項目ごと簡潔に記している。

 第2章は「肉体の部位で解き明かす高峰秀子」。身長と体重、髪、おでこなどの項目を立てて、女優の秘密に迫っていて、これがけっこう面白い。

 たとえば、身長は公称157センチだが、晩年は153センチに縮んでいたとか、左耳が全く聞こえなかったとか、実は胸はけっこう大きかったとか、一緒に暮らしたものにしかわからないことを取り上げて、それにまつわるエピソードが語られる。

 他に高峰の随筆が一編、その他「人物交友図(似顔絵入り)」「高峰秀子の家の履歴書」「高峰秀子を知るための目的別書籍ガイド全34作(表紙の写真入り)」「映画出演作一覧 169本/300余本」「生涯年表」「映画『母』DVD」と、まず至れり尽くせりである。

 読んでいて、筆者の高峰への心酔ぶりがあまりに過剰であるとか、賛辞が手放しすぎるというような嫌いがないでもないが、それほどの人に出会って、こういう本を書けるというのは、やはり幸せなことなのだろうし、それだけ高峰秀子は一人の人間として、また一人の女性として魅力的な人物であったのだろう(もちろん、女優として日本映画最高の女優の一人であることはいうまでもないが)。

 写真も多く、実に楽しく読める本であった。

 

逆さに吊るされた男

逆さに吊るされた男

 

 

▷読み通せなかった本「逆さに吊るされた男」田口ランディ(河出書房新社)

 本の帯に「地下鉄サリン事件実行犯・林泰男との14年間の交流をもとに描く私小説」と書いてあるのに惹かれて購入。読み始めたのだが、半分ほど読んでついにギブアップ。読み通せなかった。

 理由はどうしても読んでいて引っかかるところがいくつかあるからだ。

 帯には林泰夫、とあるが、小説の中ではYという名で語られる。作者とおぼしき女性作家は「羽鳥よう子」。あとはみな実名。これが引っかかる。小説の約束事などは、よくわからないし、どうでもいいと言えばそれまでだが、読んでいて、不自然で、絶えず引っかかる。

 そのYと女性作家の交流が、どうして長く続いているのか、どこか特別なものがあるのか、読み返しても、私にはよくわからない。どこを目指して語られる物語なのか、私の読解力では読み取れない。

 それから、これは好みの問題なのだろうが、表現や文章にも引っかかるところが、けっこうあって、読み進めることが私には難しかった。

 最後まで読み通せば、分かるのかもしれないが、私にはそれだけの根気が欠けている。残念な読書であった。